【レビュー】『発達障害の改善と予防:家庭ですべきこと、してはいけないこと』の内容や感想

脳科学者・澤口俊之氏の『発達障害の改善と予防:家庭ですべきこと、してはいけないこと』の内容や、感想などをまとめます。

『発達障害の改善と予防:家庭ですべきこと、してはいけないこと』の概要

著者である脳科学者・澤口俊之氏は、2006年人間性脳科学研究所を開設し、発達障害の子供達の脳機能の改善に取り組んできた実績のある人です。

ホンマでっか!?TVでおなじみの澤口先生ですね!)

そんな澤口氏が、発達障害は脳機能障害であり、予防と改善ができる!という観点から、実際に人間性脳科学研究所で脳機能の検査・改善に取り組んだ実例紹介をしつつ、家庭ですべきこと、してはいけないこと等について熱く語っている本です。

なお、この本は8歳までなら、発達障害は改善する、という内容ですので、子どもが8歳以下の方向けの本になります。

読んだ感想

読んだ感想としては、まず、発達障害は予防も改善もできるということを伝えたい!という著者の熱い思いが伝わってくる本でした。とにかく、くどい!笑

でも、くどいがゆえに重要なポイントが頭に入ってくるし、著者の思いも十分くらい伝わってくるので良いと思いました。

さて、肝心の発達障害の改善については、ワーキングメモリを向上させることが重要とのことで、自身著者が開発した数字カードを使ったワーキングメモリ訓練の概要や注意点が紹介されていました。

当書によると、全ての発達障害において、ワーキングメモリ(=意味のある情報を一時的に保持しつつ適切に操作する脳機能で、知的・情動的機能の最重要な基礎)の低下が見られるとのこと。

ワーキングメモリを向上させれば、他の高次脳機能を汎化的に向上させることができ、さらに幼児の脳は未熟で未分化なので汎化が起こりやすい。

つまり、幼児期であればワーキングメモリを鍛えることで発達障害を改善させることができる、という著者の説明には納得させられるものがありました。

また、年齢別に家庭でやるべきことについても書かれているのですが、具体的で分かりやすかったです。

ただ、一方で、この本を盲信するのは非常に危険であるとも感じました。

まず、この本に従ったからといって必ず改善するとは思わない方が良いと思います!

改善することもある、くらいの気持ちでいるのが正しいのではないかな、と。

そもそも、発達障害は先天性の脳機能障害で、本来は治すことは不可能と言われている障害です。

一方で、この本は、発達障害は予防も改善もできるという立場ですから、発達障害を持つ子の親が自分の育て方が悪かったのでは?と責めることにつながるのではないかという点も心配になりました。

あとは、著者は脳科学者であって教育や心理学の専門家ではありません。

それゆえに、発達障害について理解が不十分なのではないか?と思われる記述も散見されました。

例えば、発達障害の予防と改善のために箸を使うようにして下さい、というアドバイスが載っているのですが、不器用な子が多い発達障害児にそれを求めるのは見当違いのように思いました。食事が進みませんよ・・・。

習い事もピアノがベストとありますが、難しい子も多いのでは?

サッカーも、ルールの理解やチームプレイが難しいとかで向いていない子も多いのでは?

この本を読んで、向いていないこと、できないことを無理矢理やらせる親もでてきてしまうのではないかと心配になりました。

また、脳の発達のためには普通の幼稚園・保育園や普通学級に通わせることが重要ということが力説されていたのですが、障害児通所施設や小学校の支援学級に通わせて特別な支援を行なった方が良い子も少なくないのではないでしょうか。

どちらが適切かについては、ケースバイケースだと思うのです。

この助言に従って、普通学級にこだわる親が出てきたら良くないのではないか、と心配になりました。

〜が良い!と言いながら、調査結果などエビデンスが示されていないものが多いのも残念ではありました。

著者の個性も強く、賛否両論が出てしまうのは仕方がないのかなと思います。

ただ、全体として、一理あるなと納得できる説明も多く、発達障害の子を持つ親に希望を与える内容であり、かつ家庭で何を行ったら良いかが具体的に示されている本ということで、私はこの本に出会えて良かったと思っています。

お子さんが8歳以下で、発達障害の改善のために家庭でできることを知りたいと思ってらっしゃる方にはおすすめしたい1冊です。

本のレビューについては以上です。

長くなりましたが、お読みいただき、ありがとうございました。

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